セリエ A において、ナポリは 3 年連続でサプライズをもたらすのでしょうか。
2022 - 23 シーズン、ナポリはマラドーナ時代以来のスクデット獲得(セリエ A 優勝)を達成しました。しかし、2023 - 24 シーズンは 10 位と低迷しました。予想を裏切っての優勝、そして残酷な王座からの陥落。2 年連続で驚かされたファンは少なくないでしょう。
今シーズンもコッパ・イタリア初戦では実力的に劣る相手に対し PK 戦を必要とし、セリエ A 開幕戦ではエラス・ヴェローナに 0 対 3 で完敗しました。ナポリの不振からの脱却は遠いと思われました。
しかし、リーグ戦を 6 試合終えた現在、ナポリは首位に立っています。2 位のユヴェントスとは勝ち点 1 差、ミランやインテルとは同じ 2 差で、大きなリードではありません。それでも、昨シーズンの混乱からすれば驚きです。
アントニオ・コンテ監督を迎えた今シーズンのナポリには、識者からも高い評価が寄せられています。
パルマ戦をきっかけに好転
ヴェローナに惨敗したナポリは、第 2 節でボローニャに 3 対 0 で大勝しました。しかし、大きく流れを変えたのは、鈴木彩艶が所属するパルマとの第 3 節でしょう。
前半に PK で先制を許したナポリは、勢いに乗っていた若手揃いのパルマに苦戦しました。フビチャ・クバラツヘリアのシュートも鈴木の好守に阻まれ、なかなか追いつくことができませんでした。
しかし 75 分、鈴木が 2 枚目のイエローカードで退場となり、ナポリは数的優位に立ちました。交代枠を使い切り、急きょ DF を守護神としたパルマに手こずりましたが、アディショナルタイムの 2 ゴールで逆転勝利を収めました。
鈴木の退場がなく、劇的な 2 得点もなければ、ナポリはホームで昇格組に敗北していてもおかしくなかったでしょう。開幕 3 試合で 2 敗を喫していたら、計り知れない重圧がかかったに違いありません。
しかし、現実は異なります。パルマ戦の逆転勝利をきっかけに、ナポリは上昇気流に乗りました。
パルマ戦以降の公式戦 4 試合で、ナポリは 3 勝 1 分という成績です。しかも引き分けたのは、強敵ユヴェントスとのアウェーゲームです。さらに、この 4 試合すべてで失点しておらず、11 得点をあげています。開幕直後に、10 月に入ってナポリがセリエ A の首位に立つと想像した人は多くないでしょう。
ナポリはなぜ好調なのか
昨シーズンの失態を受け、アウレリオ・デ・ラウレンティス会長は覚悟を決めました。ビクター・オシメーンの売却が進まなかったなかでも、1 億ユーロ(約 160 億円)を超える大金を投じてチームを補強しました。
その成果の一つが、守備の改善でしょう。
コンテ監督は就任時、昨シーズンの 48 失点に苦言を呈していました。今シーズンも前述のように、開幕戦で 3 失点しています。しかし、その後の 5 試合ではパルマ戦の 1 失点のみです。6 節を消化して 4 失点は、リーグ 3 位タイの数字です。
大きく貢献しているのは、新加入のアレッサンドロ・ブオンジョルノでしょう。ケガで欠場した開幕戦が、ナポリが唯一敗れた試合なのも、偶然ではないはずです。デビューしてからのリーグ戦 5 試合はいずれもフル出場。第 4 節のカリアリ戦ではゴールも決めました。
もちろん、彼だけではありません。指揮官の愛弟子ロメル・ルカクはもちろんのこと、好評を博しているのが、マンチェスター・ユナイテッドから加入したスコット・マクトミネイです。その存在はコンテ監督に 3 バックから 4 バックへの移行を決断させました。システムの選択肢が増えたことを評価する声もあがっています。
ただ、なによりも大きな要素は、やはりコンテという指揮官でしょう。
“プリマドンナ” を許さず、個よりも集団を最優先する哲学は、チームの団結力を高めます。労を惜しまないハードワークを求める厳しさは、もろく崩れた昨シーズンを過去のものとするはずです。
セリエ A に戻ってきた主役
名将アッリーゴ・サッキも、『La Gazzetta dello Sport』紙のコラムで「みんながクバラツヘリアのドリブルやルカクの加速に沸くのは当然のこと。だが、チーム全体を拍手すべきだ」と称賛しました。
「調和のとれた集団に見えます。それぞれが各々の役割と機能を知り、さらに監督が伝える原則のおかげで、チームメートのために献身的になり、困っている者を助けるためにさらに走る用意ができています。つまり、犠牲を払う用意があるということです」
また、サッキは「ナポリは美しいサッカーを愛しています。ナポレターニの DNA にはプレーがあるんです。スタジアムで楽しむことを望んでいます。コンテ監督はそれをすぐに理解しました」とも指摘しています。
「スクデットを追うためのクオリティーをすべて備えています」
「イタリアのリーグは主役を取り戻しました。ナポリはとことんタイトルを競うでしょう」
コンテ監督自身は、スクデットへの期待(と重圧)が高まることを警戒しています。まずは目の前の試合で結果を出すことが欠かせないと強調しています。サッキも「ナポリは情熱的な街で、火に油を注ぐのは損害にしかなりません」と、その姿勢に賛同しています。
実際、ナポリは 10 節以降にミラン、アタランタ、インテル、ローマ、トリノ、ラツィオと、強敵との試合が続きます。先を考えるより、足場を固めることが欠かせないです。
ただ、それでも、ファンの高揚感を止めることはできないでしょう。1 年半前に歓喜に酔いしれた人々は、もう一度その味を取り戻したいと望んでいるはずです。