鈴木彩艶のセリエ A デビューシーズンは、不都合な展開に向かっていた。しかし、彼自身が力を振り絞り、その流れを変えたかもしれない。それほどの圧巻の守備だった。
9 月 21 日、鈴木が所属するパルマは、敵地でレッチェと対戦し、2 対 2 で引き分けた。先制点を許し、後半序盤に数的な優位に立ったものの、10 分後に自チームも退場者を出し、直後に追加点を与えてしまった。その後もピンチを繰り返した。しかし、アディショナルタイムで 2 得点を挙げ、勝ち点 1 を獲得した。
鈴木をきっかけに 9 年ぶりの 3 試合連続退場
パルマは開幕から魅力的なサッカーを披露し、称賛を浴びていた。第 2 節では名門ミランに勝利を収め、今季のサプライズ候補として評価が上がっていた。しかし、その勢いを失ったのは、鈴木が退場した第 3 節のナポリ戦だった。
議論を呼んだ判定は別として、鈴木の退場をきっかけに、結果はパルマに不利な方向へと進んでいった。
強豪ナポリと対戦し、一時的に優位に立ったナポリ戦は、アディショナルタイムに 2 失点を許し、1 対 2 で敗北した。鈴木が出場停止となった続くウディネーゼ戦も、前半に 2 得点を挙げながら退場者を出し、後半に 3 失点を許して逆転負けとなった。そしてレッチェ戦も前述の通り退場者を出し、2 点のビハインドを背負った。
パルマがセリエ A で 3 試合連続で退場者を出したのは、2015 年 3 月以来、9 年半ぶりのことだ。
ウディネーゼ戦の敗北も、レッチェ戦の 2 失点も、鈴木に責任はない。それでも、順調だったナポリ戦で鈴木が退場して以来、パルマが厳しい状況に陥ったのは事実だ。さらに 3 試合連続で退場者を出し、3 連敗となれば、パルマにとっては悪夢のような展開だった。
鈴木の退場が、結果的にチームの今季を不都合な方向へと変えてしまうのか。大きな懸念が浮上した。
「ワイルドなエンディング」を生み出す
しかし、レッチェ戦で先発復帰を果たした鈴木は、今度はパルマを苦境から救った。
アディショナルタイムの 92 分、パルマはカウンターでレッチェに決定機を与えてしまった。鈴木とニコラ・クルストビッチが 1 対 1 となり、誰もがレッチェの追加点を確信していた。その絶体絶命のピンチに、鈴木は諦めることなく、冷静かつ必死に対応し、シュートを阻止した。
さらに鈴木は直ちに立ち上がり、ラインを割ったボールを拾おうとした。できるだけ早くプレーを再開し、ゴールにつなげるためだ。そしてその姿勢が報われた。直後に 1 点を返したパルマは、さらに 3 分後に追加点を挙げた。クラブ史上 2 回目となるアディショナルタイムでの 2 得点により、3 連敗を回避した。
あまりにも劇的な同点劇は、鈴木の大活躍に始まった。YouTube のセリエ A 公式チャンネルは、「クレイジーな最後の 6 分間」「ワイルドなエンディング」と紹介している。
安定への転機となるか
鈴木の守備がなければ、パルマは 0 対 3 で敗北していただろう。もちろん、勝ったわけではない。パルマが 14 位と安心できない位置にいるのは確かだ。それでも、勝ち点 1 を獲得し、残留を争うライバルであるレッチェの勝利を阻止したことは大きい。
何よりも、ナポリ戦を境に勢いを失っていたパルマは、再び浮上する可能性がある。ナポリ戦での鈴木の退場は、悪い意味での転機になる恐れがあった。しかし今度は、レッチェ戦での圧巻の守備が、良い意味での転機になることが期待される。
若手チームには浮き沈みはつきものだ。開幕からわずか 5 試合で、彼らはすでに「浮き」も「沈み」も経験した。鈴木もチームも、次はこの経験を生かして再び浮上し、そして安定することが課題だ。